ニルス・ウド、2018年のアートシーズン

「ニルス・ウドの巣に対する情熱を反映して、彼が創造し続けるのは根源的なフォルム、それは失われた楽園、母親の子宮、避難場所に対する強迫観念です。巣は、出産の開始点と終了点を表しています。(…)」

インスタレーションのタイトルは「火山」で、今年の11月4日までグアルー公園で展示されています。
ニルス・ウドのインスタレーション(「火山」)、写真 Eric Sander ©
ニルス・ウドのインスタレーション(「火山」)、写真 Eric Sander ©
ニルス・ウドのインスタレーション(「火山」)、写真 Eric Sander ©

1937年南ドイツのバイエルン地方に生まれた現代美術家ニルス・ウドは、1960年代にパリで画家として活動を開始しましたが、1970年代初頭から生まれ故郷の自然の中でその場所にある樹木や草花を用いて制作を行うようになり、その後活動の範囲をヨーロッパ各国、そして日本を含む世界各地へと広げ、公園などの大規模な景観プロジェクトも手がけながら現在に至っています。その造形は、時には風や水の動きによってごく僅かな時間しか存在せず、また時には季節のうつろいの中で変容していきますが、いずれも自然に対する類いまれな知識に裏打ちされています。作家はこれらの造形を恒久的な作品とするために撮影を行い、洗練された感覚をたたえた写真作品として提示します。自然そのものをインスピレーションの源とし、自然への深い洞察と共感に基づいて生み出された彼の作品には、光や風、水や花びら、あるいは木の葉に宿る自然の本質的な美しさ、生命の輝きが見事に結晶化されています。自然環境の破壊が進み、自然と人間との関係が改めて問い直されている今日、ニルス・ウドの豊穣な作品世界を展望する本展は、自然の豊かさ、大切さに思いを巡らす絶好の機会となることでしょう。